ヒトvasoactive intestinal peptide(VIP)遺伝子の5^1上流域を大腸菌のベータガラクトシダーゼ遺伝子につないだキメラ遺伝子をラット褐色細胞腫細胞PC12に導入した細胞(PCVG細胞)を作成し、この細胞をcAMPで刺激した時の細胞内ベータガラクトシダーゼ活性の発現について基礎検討した。dibutyryl cAMPおよびforskolinのいづれの刺激によっても約6時間の刺激後にベータガラクトシダーゼ活性は頂値に達し、以後漸減した。PC12細胞はそれ自身がVIP受容体を有しており、VIP刺激によっても同様に約6時間後にベータガラクトシダーゼ活性が頂値に達した。これらの細胞内cAMPを上昇させる刺激は互いに相加的に作用したが、これらの刺激とtetradecanoylphorbol acetate(TPA)を同時に加えると相乗的にベータガラクトシダーゼ活性を上昇させた。TPA刺激のみではベータガラクトシダーゼ活性は検出感度以下であったため、TPA刺激下で特異的リガンドを作用させることにより、そのリガンドの受容体を検出する感度を上げることができると考えられる。 また、このキメラ遺伝子はPC12細胞およびC6細胞において細胞特異的に発現する事が明らかになった。ベータガラクトシダーゼをレポーター遺伝子とするキメラ遺伝子をヒトproopiomelanocortin(POMC)遺伝子で作成し、マウスAtT-20細胞に導入するとやはり細胞特異的に発現した。これを利用して、ヒトPOMC遺伝子の5^1上流域の組織特異的enhancerを検出することに成功した。
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