研究課題/領域番号 |
05807088
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
森島 豊彦 大阪大学, 医学部, 助手 (50221635)
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研究分担者 |
梶本 佳孝 大阪大学, 医学部・附属病院, 医員
岩間 令道 大阪大学, 医学部・附属病院, 医員
山崎 義光 大阪大学, 医学部, 助手 (40201834)
河盛 隆造 大阪大学, 医学部, 講師 (00116021)
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キーワード | インスリン遺伝子 / 転写因子 / 多型性 / 選択的スプライシング |
研究概要 |
我々は、最近、preadipocyteの細胞株Ob1771細胞よりinsulin遺伝子のNir box等に結合する転写因子E47(ヒト)のmouse homologueであるA1 cDNAを独自に単離し、既報のA1に比し、同蛋白のdimer形成に重要であるleucine zipper motif部位に1アミノ酸(グルタミン)の欠失を認め報告していた。平成5年度には、さらに、Ob1771細胞が由来するC57BL/6 ob/obマウス、加えて、C57BL/6、C57BL/Ks、DBA/2、C3H、Swiss(ICR)、BALB/cの各マウスstrainにおいて、肝より回収したtotal RNAを用いたRT-PCR法を行い、A1 cDNAをcloningし解析した。その結果、C3HマウスのA1のみが既報のA1に一致し、その他の5つのstrainでは全てOb1771細胞タイプのA1が同定された(Gene(1994),in press)。C3Hは従来よりインスリン分泌の少ないことが知られており、A1に認められた多型性との関連が注目される。 E47が由来するE2A遺伝子からは、alternative splicingにより、互いにbHLH領域のみを異にするE12が産生される。bHLH領域はdimer形成とDNAへの特異的結合に重要な配列であり、両者がいかに役割を分担するかが注目されていた。我々は、やはり平成5年度に、ヒトE12のmouse homologueのdoningに初めて成功しkA1と名付けた(投稿中)。E47/E12の構造比較では、A1とkA1の間の相同性は約70%に留まったのに対し、E47とA1或はE12とkA1の間ではともに97%以上の高い相同性を認めた。このような進化上のb-HLH構造の保存はE47(A1)、E12(KA1)の各々が、共有されない何等かの固有の機能を有していることを強く示唆している。そこで我々はA1,kA1の個別の転写因子としての生理的意義を明らかにする一歩として両者の発現比率をmRNAレベルで検討した。その結果、筋芽細胞C2C12では分化に伴ってAl/kA1とdimerを形成するmyogeninは増加を示したのに対し、A1/kA1は逆に減少し、且つ、A1とkA1との発現比率に変化を認めなかった。膵β細胞に由来するMIN6細胞においてはglucose濃度の変化に反応してA1/kA1の発現量が変化したが、同じく発現比率に変化を認めなかった。一方で、mouseの各臓器において、A1/kA1比は、骨格筋0.34、脾臓0.36、脳0.55、肺0.39、心筋0.42、肝臓0.85、膵臓0.80、精巣1.09と臓器により大きく異なるという興味深い知見を得た。現在、このA1/kA1の発現の組織特異的発現比率の違いの生理的意義についてはさらに検討中である。
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