平成5年度までに、38症例の急性骨髄性白血病細胞(AML)について各種サイトカインへの増殖反応を検討し、28症例がG-CSF・GM-CSFの両者に増殖反応を示すことが明らかになっていた。そのうち10症例については、G-CSF・GM-CSFの存在下の生存期間の変化、サイトスピン標本の通常染色による形態的変化やアポトーシス頻度等について検討していた。今年度は、これらの症例のうち培養経過中の複数の時点でサイトスピン標本が残されていた6例について、エステラーゼ二重染色によるエステラーゼ発現の変化、免疫組織染色によるFas抗原の発現、bcl遺伝子の発現等について検討した。その結果、Fas抗原の発現を検討しえた6例のうち4例でG-CSF群に有意にFas抗原発現が増加しているのが確認された。特にM4の1例ではcontrol、GM-CSF群で全くFas抗原が発現せず、G-CSF群でのみ著明なFas抗原の発現が確認された。このことは、すべてのAML細胞ではないとしても、少なくとも一部のG-CSFに増殖反応を示すAML細胞はG-CSFに特異的に反応してFas抗原の発現が多くなることを示したといえる。前述のM4症例では、G-CSFによる何らかの分化誘導→Fas抗原の発現→アポトーシスという図式の存在が示唆される。しかし同一症例でのさらに詳細な検討は、死亡・寛解中・骨髄移植後等の理由により不可能である。新しい症例のプロスペクティブな研究が必要と考え、症例の蓄積を待っている。bcl遺伝子の発現については傾向を示唆するようなデータはこれまでに得られていない。当初平成5年度中に予定していたヌードマウスあるいはSCIDマウスへの白血病細胞移植とG-CSFの影響の検討についてはこれまでに出来ず、平成6年度の課題と考えている。
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