平成6年度までに、ある種の条件に左右されるとしても、CD95(Fas抗原)発現はAML細胞においてもかなり普遍的な現象であることを明らかにした。G-CSFはAML細胞を形態的に成熟した好中球に分化させることはなかったが、アズ-ル顆粒の増強という点で初期の分化段階(1次顆粒発現)を誘導したものといえる。この初期の分化段階とFas発現が現象的に並行することも明らかになり、しかもIgM型抗Fas抗体によるアポトーシス誘導シグナルを伝達する機能的なFasであることもわかった。更に、平成6年度の後半にはAML-M4患者に由来する新鮮白血病細胞の特徴をよく保持した細胞株KB-8の樹立に成功した。この細胞株から得られるデータは、臨床におけるAML細胞の反応をよりよく反映すると思われ、平成7年度はKB-8細胞株を用いたより詳細な実験を行うことが可能となった。 その結果、G-CSF添加によりKB-8細胞株はazur顆粒の増強と一部に好中性顆粒の発現をもたらし、顆粒球系の分化マーカーCD11b・CD13・CD14・CD33の発現増強とともに、Fas抗原の発現を誘導する。一方Bcl-2蛋白は高率に発現されており、G-CSFの添加によっても有意の変化は見られなかったが、アポトーシス細胞の増加は見られる。アポトーシスは抗Fas抗体により4時間で50〜70%の細胞に特異的に誘導され、機能するFas抗原であることも明らかになった。以上はは新鮮AML細胞から得た我々のデータとよく一致する。 本研究計画により、G-CSFはAML細胞に対し成熟顆粒球までの分化はもたらさないとしても、その初期段階(azur顆粒増加、分化抗原の発現〜増強)の変化をもたらすとともに、Fas抗原発現を誘導してFasを通じたアポトーシスのシグナルに感受性を有するようになることがわかった。このことから推測されることは、G-CSFはAML細胞にFas発現を誘導しこれをターゲットとしてアポトーシスを誘導できるかも知れないということである。今後は、治療面への応用という点で、更に検討を進める予定である。
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