研究概要 |
放射線誘発マウス骨髄性白血病細胞株C2M-A5株を移植されたマウスは白血病を発症し全例死亡したが、C2M-A5細胞移植翌日からG-CSFを皮下注射すると、マウスは白血病の発症を免れて生存し続けた。このようなG-CSFによる白血病発症抑制のメカニズムを検討するため、C2M-A5細胞に対するG-CSFの効果をin vitroで検討したところC2M-A5細胞はG-CSF非存在下では約24時間のdoubling timeで殖能するが、G-CSFが存在すると48時間後には自己再生能が低下し、マウスに対する白血病発症能が失われることが判明した。また、同時にC2M-A5細胞の核の断片化、および電気泳動にてDNAのladder formationが認められたため、G-CSFによる白血病発症抑制の機序にC2M-A5細胞のapoptosisが極めて重要な役割を果たしていることが推定された。G-CSF以外のサイトカインにも同様な効果が認められるか否かについて検討したところ、GM-CSFおよびIL-3も同様な作用が持つことが判明した。一方、M-CSF,IL-1,IL-4,IL-5,IL-6,IL-7,EDF,SCF,ATRA,Ara-Cなどには効果がないことが明らかになった。また、G-CSFによる癌遺伝子の活性化について検討したところC2M-A5細胞ではG-CSFによってc-mycの発現が誘導されてくることを示唆する成績が得られた。apoptosisは細胞の増殖と関係なく起こることから間期死と考えるのが一般的であるが、本研究は白血病細胞のような増殖する系でもapoptosisが誘発されることを示すものと考えられる。C2M-A5細胞ではG-CSFと接触後少なくとも1回の細胞分裂の後にapoptosisが誘発されると考えられるので、apoptosisと細胞周期との関連性についても今後検討してゆく必要があると考えられた。
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