研究概要 |
放射線誘発マウス骨髄性白血病細胞株C2M-A5に対するアポトーシス誘導効果の有無をG-CSF以外の造血因子について検討したところ、GM-CSFおよびIL-3にも同様の効果のあることが判明した。すなわち、C2M-A5細胞の培養系にこれら造血因子を添加すると、細胞のviabilityの低下、細胞増殖の抑制、自己増殖能の抑制、好中球様細胞への形態変化、およびDNAのフラグメント化が認められた。GM-CSFによるC2M-A5細胞に対する抑制効果は、抗G-CSF抗体および抗IL-3抗体存在下でも認められ、また、IL-3による抑制効果は抗G-CSF抗体および抗GM-CSF抗体の存在下でも認められたことから、これら造血因子によるC2M-A5細胞に対する抑制効果はそれぞれの造血因子の独立した効果であることが推察された。さらに、GM-CSFをC2M-A5細胞移植マウスに投与したところ、マウスの白血病発症が抑制されたことから、GM-CSFによるC2M-A5細胞の抑制効果がin vivoでも確認された。これに対して、Epo,M-CSF,SCF,LIF,EDF,IL-1,IL-4,IL-5,IL-6,IL-7,IL-11などの造血因子には、このような効果は認められなかった。次に、G-CSFによるC2M-A5細胞のアポトーシス誘導と癌遺伝子との関連について検討したところ、G-CSFによるアポトーシス誘導に先立ち、c-mycの発現が認められた。しかし、jun,fos,myb,sis,scr,erb-Aなどの癌遺伝子の発現は認められなかった。このことから、G-CSFによるアポトーシス誘導にはc-mycの関与が示唆された。さらに、G-CSFによるC2M-A5細胞のアポトーシス誘導と細胞周期との関連性を検討したところ、細胞がG_0/G_1期に集積し、S期の比率が低下してアポトーシスが誘導され、細胞周期の停止状態では誘導されなかったことから、細胞周期の回転がアポトーシスの誘導に必要であることが示唆された。
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