研究概要 |
ヒトIgA1は血清蛋白として例外的に、そのヒンジ部にムチン型糖鎖を持つ事に注目し、IgA1の糸球体沈着を特徴とするIgA腎症に対し検討を行なった。 1)IgA1とマクロファージとの糖鎖を介した結合機転の検討。ヒトマクロファージのモデルとしてTHP-1とU-937を用いた。各celllineをPHA刺激ヒトリンパ球培養上清またはPMAで刺激し、IgA腎症患者、他の腎炎患者から分離したIgA1との結合をFACSで検討したところ両celllineでIgA腎症患者で他の群より増加していた。さらに、各種carbohydrateを用いた、結合抑制試験をTHP-1で行なったところ、ムチン型糖鎖と類似構造を持つ、melibiose,galactoseで弱いが明らかな結合抑制が認められた。 以上より、本症糸球体内での組織macrophageとムチン型糖鎖を介したIgA1の結合が本症の組織障害進展の一因となっている可能性が示唆された。 2)IgA間の糖鎖を介した結合機転に起因した巨大分子IgA(糸球体沈着性IgA)形成の可能性。以前の検討で分離したasialo-IgA1をIgA1カラムにかけそのelutionpatternからIgA1同士のinteractionを観察したところ明らかなpeakのretardationが認められた。このinteractionはGal,MelでGlc存在下に比べretardationの抑制をみた。次にasialo-GalGalNAcを構造内にもつasialo-fetuinをcoatし、分離IgA1を加えたELISA法でその結合を、IgA腎症患者、他の腎炎患者、健常者で比較したが、本症患者群で他の群より有意に増加していた。15EA05:以上の検討からIgA1ヒンジ部ムチン型糖鎖のasialo体がIgA1間の結合機転に何らかの役割を果たしている可能性が示唆された。
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