研究概要 |
内膜肥厚モデルとして動静脈間バイパスを選択し、ePTFEと自家静脈compositeグラフトを雑犬の大腿動静脈間に主に移植し基礎検討を継続した。内膜肥厚抑制を目的とした手技の一つとして自家静脈端約2cmの範囲を1%Glutaraldehyde (GA)で約10分間固定した後に内径5mmのePTFEと端々吻合を行いcompositeグラフトを作成した。移植後1か月の剔出標本では走査電顕でGA固定領域の抗血栓性は良好で再内皮細胞化が起こっているのが観察された。また、組織学的には連結部に仮性内膜増殖が認められたが、これらは縫合線からの組織侵入による可能性が示唆され、吻合部をePTFEで被覆した場合の検討が必要となった。また、臨床例の透析用シャント再手術時の剔出標本では、GA固定領域から非固定域への静脈移行部に内膜肥厚が観察されこれらの対策が必要と考えられた。しかし、大腿動静脈間のバイパスではグラフト感染の頻発により長期開存を得るのが困難と考え、頚動静脈間バイパスに変更し移植後3および6か月の観察を継続した。GA固定群およびコントロールとして非GA固定compositeグラフト移植群の剔出標本をePTFE中央部、連結部、自家静脈GA固定部、自家静脈中央部に分けPDGF,c-myb,c-mycのmRNA発現状態をNorthan blotによるFilter hybridization法にて経時的に観察している。また、同時に臨床例のePTFE吻合部内膜肥厚標本や自家静脈グラフト移植早期のこれら増殖遺伝子の発現と組織所見についても比較検討を行っている。
|