研究概要 |
虚血細胞障害機構を解明し、その障害保護について研究することは、シヨツク等の虚血性病態の解明や移植臓器保存の立場からきわめて重要である。今回は、白血球とその接着分子のこれらの障害への関与について検討した。 肝虚血再潅流障害:ウイスター系ラツトを用い、90分間の70%部分肝虚血モデルを作製、虚血5分前に抗白血球接着分子抗体(mAb)である抗ICAM-1、CD11a、CD18抗体を静脈内投与した。再潅流後24時間まで肝内好中球数は増加し、再潅流後4時間において肝内ICAM-1の発現は増強した。mAb投与は、好中球浸潤、肝過酸化脂質生成は有意に抑制し、肝ATPを有意に改善した。90分の全肝虚血モデルにおいても、mAb投与はラツト生存率を有意に改善した。 エンドトキシンシヨツク:ICRマウスにエンドトキシン(LPS:30mg/kg)を腹腔内投与した。同時に、抗CD11a,CD11b,CD18,ICAM-1,LECAM-抗体、メチルプレドニゾロン(MP:30mg/kg)を静脈内投与した。LPS投与後48時間の生存率は対照群で36%であり、抗CD11a,CD18、LECAM-1抗体および MP投与により生存率は70%、62%、64%および100%に改善した。フローサイトメトリーにおいて顆粒球上のCD18の発現量はLPS投与後30分で正常の約12倍に増加した。肝過酸化脂質は、LPS投与後4時間で約5倍に増加し、抗CD18抗体およびMP投与により低下した。 白血球は、肝虚血再潅流およびエンドトキシンシヨツクの病態形成に関与し、抗接着分子抗体投与はこれらの病態での治療薬となりうる可能性が示唆された。本研究の接着分子mAb投与は虚血前の投与が必要あり現在注目されているSelectin等のmAb投与、再開後の投与でも有効性が期待され、今後の研究が必要と思われる。
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