平成5年度中、T-LAK細胞クローンの作製を行い約20クローンを得た。それらのクローンのうち増殖の比較的安定していた5クローンにつき、LAK活性、NK活性、表面マーカーなどの検討を行った。さらに膜型リンフォトキシン(mLT)の表出についても染色を行い検討した。しかし、これらのT-LAKクローンはLAK細胞に比べてmLTの表面が非常に弱く、残念ながら以後の検討に用いることのできるようなクローンは得られなかった。ために、以後は非クローン化LAK細胞を使用し検討をすすめた。その結果、HL-60細胞やU937細胞など一部の腫瘍細胞株には、LAK細胞による細胞障害活性が抗LT抗体によって抑制されるものがあった。これらの腫瘍細胞は同時に、mLT陰性LAK細胞による被障害性も弱く、LAK細胞にはmLTの介在する腫瘍細胞障害活性が存在していることが明らかとなった。このmLTを介した抗腫瘍活性は、クロミウムを使用した測定系において抗腫瘍活性を示さない可溶性リンフォトキシン(LT)では全くブロックされず、さらに、抗TNFレセプター抗体でも抑制されなかったことより、TNFレセプター以外の未知のレセプターを介してシグナリングされている可能性が示唆された。さらに、mLT陽性LAK細胞は陰性細胞に比べてICAM-1やLFA-1などの接着因子の表出が高く、細胞接着性の増強がmLTを介した腫瘍細胞障害活性と何らかの係わりをもっている可能性も示された。
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