1)ウサギを用いて、移植自家静脈グラフトの内膜肥厚における血流条件、高脂血症の影響の経時的変化を検討した。normolipidemia群では、異常血流肢で正常血流肢と比べ有意に内膜肥厚が著明であった。hyperlipidemia群では、正常血流肢でも内膜肥厚がみられ、異常血流肢ではさらに有意に内膜肥厚が著明であった。抗マクロファージ抗体(RAM11)を用いて免疫組織学的に検討するとhyperlipidemia群のみにRAM11陽性細胞が認められ、移植後2週では、肥厚内膜外層に主にみられ、4週ではその陽性細胞の数が増加し、一部内弾性板の直上にもみられた。移植後6週では正常血流肢、異常血流肢ともにRAM11陽性細胞の肥厚内膜への浸潤が著明に増加し、特に異常血流肢では、マクロファージ浸潤はびまん性で、内皮直下、あるいは内腔近くの層にも多数の浸潤を認めた。 2)犬後肢動脈を伏在動脈以下膝窩動脈までの分枝を残した以外本幹まで結紮切離し異常血流モデルを作成。移植6週後に、右大腿動脈(異常血流群)及び左大腿動脈(正常血流群)を摘出。等尺性収縮張力法にて内皮依存性弛緩反応を比較検討。AChによる内皮依存性弛緩反応及びSNPによる内皮非依存性弛緩反応は両群間に有意差はみられなかったが、ADPによる内皮依存性弛緩反応は異常血流群で有意に抑制された。この事は、runoffの悪い異常血流条件下におけるグラフト再建はhost arteryのEDRF(内皮依存性弛緩因子)産性低下が血症板凝集を促進し、移植グラフトの晩期閉塞を助長する可能性を示唆した。
|