手術時に採取した膵石を、1)走査電子顕微鏡観察に備えKarnovsky's solutionに低温保存、2)強酸を用いた膵石の短時間脱灰、またEDTAを主に用いた暖徐脱灰の両者で膵石の有機基質を得、これらを後の走査電子顕微鏡観察と、組織染色、免疫組織染色用にそれぞれ処理を行った。理想的には脱灰処理の不要な蛋白栓を得たかったが、本年度も臨床例からの蛋白栓は採取し得なかった。 脱灰後膵石有機基質の走査電子顕微鏡による観察では、強酸による短時間脱灰後の有機基質は、非常に微細な網状構造が複雑に交錯し、予想どおりの密な構造を示した。しかし、EDTAを主とした緩徐脱灰では、かなり粗な構造をしめし、これは光顕レベルでの観察結果と対応した。つまりEDTAを主とした緩徐脱灰では物理的な振とうにより、従来の構造が破壊されつつある可能性が示唆された。強酸を用いた短時間脱灰ではその影響による化学的変性が問題になってくるが、この点に関しては、同時に膵石表面に付着した膵管上皮細胞の構造はよく保たれ、免疫染色でも各抗原性がよく保たれていることまで確認された。 脱灰後膵石有機基質の抗フイブロネクチン、抗ラミニン、抗コラーゲンIV、抗ラクフェリン、抗reg・PSPの各抗体を用いた免疫染色では、各成分ともに膵石有機基質中に染色され、それぞれの分布様式のある傾向も認められた(negative controlではいずれも染色されず)。これらの染色性も強酸による脱灰群で良好な染色性をしめした。
|