難治性頻脈性不整脈に対する非薬物療法として直達手術、高周波カテーテルアブレーションが試みられている。しかし前者は手術侵襲が大きく、後者は進達度の問題で心外膜側の頻拍発生源を有する症例には無効である。一方、呼吸器外科領域では胸腔胸鏡下手術が盛んに行われる様になり、それ以外の領域への応用も試み始めている。今回我々はこの胸腔鏡を用いた方法を、頻拍の心外膜アプローチによる手術に応用を試みた。 成犬を静脈麻酔下に分離気管内挿管し、左気胸を作成した。ついで左肋間3個所に小切開(胸腔鏡挿入用ほか2個所)を加えた。次いで胸腔鏡下に、把持鉗子で肺をよけ心膜に達し鋏み鉗子で心膜を切開した後に、特注電極を用い心表面マッピングを行った。電位はマッピングシステムHPM-7100(フクダ電子社製)で採取した。最後に、Nd:YAGレーザーのプローベを挿入し、非接触法で心表面からの心筋アブレーションを試みた。 心表面からのレーザアブレーションにより境界鮮明な病巣の作成が可能であったが、小型犬1例で心外膜での破裂を生じた。この破裂は、胸郭と心膜の解剖学的な位置関係から、レーザープローブと心膜との距離を十分取り得ないためであった。従って体重の少ない犬においてはレーザーの非接触法は困難、危険であることが予想された。また現在の胸腔鏡下手術では3次元での像を得ることが出来ないため技術的習熟が要点となると思われた。この点からいえばエネルギー源としてレーザーでなしに、高周波を用いる方法が有望と思われた。
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