カルボシアニン蛍光色素DiIをエチルアルコールに溶解し、臓器局所に注入すれば、2週間後には蛍光色素は、器に対応した脳幹の神経細胞核内にまで軸策内を逆行性に上昇し、蛍光顕微鏡下で蛍光を発生する。これにより、器の脳幹内での空間分布を明らかにできる。また、蛍光の確認にはG1Aの励起フィルター、580nmの吸収フィルターを2枚重ねて使用することが、明確な画像を得るのに必要である。 1)ICRマウスで予備実験:左肺に色素を注入した。脳幹では左右の迷走神経背側核、疑核に蛍光色素の存在を認めたが、同側に蛍光色素を含む細胞数が多い傾向が見られた。 また、肺内に注入する際に、色素が血管内に入り、脳内血管内に蛍光色素の沈着を来す。 2)ラットでの本実験;マウスでは脳内の神経細胞核の分布についての一定した知見が乏しく、本実験はラットで行うことにした。まず、麻酔下に左右の頚部の迷走神経幹を剖出し、DiIを小さなカプセルに注入した後、直接、神経と接触させる。左右の迷走神経の脳内での空間分布を定量的に地図作りを行っている。現在、調べ終えた右の迷走神経の脳内の分布は、右迷走神経背側核は小脳下縁-300nmから1800nmまでに分布し、右の疑核は小脳下縁頭側100nmから1800nmにかけて分布している。右迷走神経核への投射細胞数は、右疑核に対するものの約4倍である。今後、左の迷走神経や、胃・十二指腸に色素を注入し、その逆行した蛍光色素を含む細胞についても、脳内での空間分布を検討予定である。 今後の研究方針;Lewisラットを用いた同種肺移植手術の試み。さらに長期生存(最低3カ月)後に、蛍光色素の脳幹への逆行試験を行い、蛍光色素に染まる神経細胞核をカウントし、分布を定量化する事により、神経再生の程度を脳幹において定量化する。ラットの肺移植に際しては、NGFを吻合肺門部に大量投与した群や免疫抑制剤を投与しつづけた群についてのコントロールを取り、影響を比較検討する。
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