研究概要 |
(1)細胞の不死化は悪性腫瘍の初期腫瘍性変化と考えられているが、グリオーマに至る過程の中でその不死化に関する知見は乏しい。私たちは接触抑制を有し造腫瘍性のないラット胎児グリア不死化細胞5株を樹立した。その不死化に関してras,myc,c-sis,neuなどの既存の発癌遺伝子の異常を検討したが、それらの異常はみられなかった。 (2)線維芽細胞の不死化に癌抑制遺伝子p53 alleleの部分的欠失、mRNAの消失あるいは発現低下、不活性型p53の産生等が関与していることが知られているが、私たちの不死化グリア細胞には、そのようなp53の変化はみられなかった。 (3)そこで、これらのグリア不死化株から、グリア細胞不死化に最も関与する遺伝子を見出すことを第一の課題とし、それと相同性を有するヒトグリア細胞の遺伝子をクローニングすることをめざした。 (4)正常の胎児グリア細胞と不死化グリア細胞のcDNAライブラリーを作成し、各々の間でdifferential hybridizationを行なった。 (5)これらの細胞間で信号強度の異なる400余りの候補遺伝子サブクローンをスクリーニングし、順次これらのDNAシーケンスを行なっている。 (6)現在、これらのサブクローンのシーケンスを遺伝子バンクに登録された既知のDNAシーケンスと比較検討し、アストログリアの不死化の責任遺伝子を検討している。 (7)平成6年度には、スクリーニング・解析後の検討で候補と考えられる遺伝子を各々の細胞に導入し、その発現結果(不死化の獲得あるいは解除など)を検討して、責任遺伝子を決定づける予定である。
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