研究概要 |
平成5年度研究実績として報告した、1.意識水準の客観的評価、2.痴呆の電気生理学的評価に関する成果を踏まえ、"高周波脳波ゆらぎ解析"が信頼性の高い一つの薬物脳波学的手法であることを、向知性薬TA-0910を用いて検討した。 1.TA-0910投与前後のパラメーターS1,S2の変化 十分なインフォームド・コンセントの得られた8例を対象とした。投与前MMSは平均17.5で、標準偏差は4.3点であった。15点以下の重症痴呆1例を除きすべて中等症であった。これら全例で、パラメーターS1のトポグラフィー表示において正常な前頭部優位のパターンを認めなかった。また全例で広範なパラメーターS2の低下を認めた。 TA-0910投与後MMSは平均24.0、標準偏差5.6点と著明な改善を認めた(P<0.001)。一方、投与前後におけるパラメーターの変化は、個々の症例においてS2の優位な上昇を広範囲に認めた。 2.パラメーターS2とMMSとの相関 MMSは世界的に利用されている簡便な知的レベル評価法である。MMSをはじめとする種々のこれら知的レベル評価、脳の後半部の機能評価である。そこで、前半部のFzと後半部のPzにおけるパラメーターS2と、それに対応するMMSとの相関を検定した結果、PzにおけるS2とMMSとは有意水準99%で相関関係が得られた一方、FzにおけるS2とMMSとは有意な相関は得られなかった。 以上の結果から、"高周波脳波ゆらぎ解析"が信頼性の高い薬物脳波学的手法であることが強く示唆された。
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