研究概要 |
平成6年度はヒトグリオーマ細胞株10種の糖脂質成分の分析と定量、および各糖脂質抗原量と抗体反応性の関係を抽出抗原及び細胞膜上抗原の2点から解析した。グリオーマ細胞の酸性糖脂質(ガングリオシド)は主にGM3およびGM2からなり、両者の量的関係によりGM3-dominant,GM2-dominant,GM3,GM2-co-dominant typeに分類可能であった。抽出抗原の薄層クロマトグラフィー上での抗体反応性を半定量的に解析すると、GM3、GM2ともに反応性は抗原量依存的であった。細胞膜上での抗体反応をindirect immunoflurescenceにてflow cytometryにより解析すると、GM3の反応には反応域値があり、20 nmol/100 mg細胞湿重量以上のGM3が、安定した抗体反応には必要であり、5 nmol/100mg以下では全く反応しなかった。5-20 nmol/100mgのGM3量では反応性は一定しなかった。GM2の反応性は抽出抗原及び細胞膜上抗原いずれの場合もGM3より反応性が高く、両抗原間に明かな抗原性の相違を認めた。GM2に対する抗体反応性が高い細胞はGM2-dominant細胞群ではなくGM3、GM2-co-dominant細胞群で、GM2に対する反応性が単に抗原量に規定されたものでないことが判明した。抗体の反応性に影響をする因子は数多く上げられるが、我々は特定のグリオーマ細胞株では細胞密度が抗体の反応性に大きく影響することを認めており、今後は抗原の定量と共に、抗体反応に関わる因子の解析も行い、グリオーマ細胞に対する抗体反応が最も効率よく行われる条件を明らかにして行きたいと考えている。
|