研究概要 |
1.頚椎に関する解剖学的研究:平成5年度に引続き、日本人頚椎の形態に関する研究を継続し終了した。骨格標本の直接計測、X線計測、CTの計測により、これまで報告のなかった頚椎椎弓根の各椎骨における短径、椎弓根軸の方向などの平均値が明らかになった。椎弓根径は第4、5頸椎で最も小さく、その上下では大きかった。 2.頚椎の動態に関する生体力学的研究:健常人ならびに頚椎に不安定椎間を有する患者を対象に連続X線撮影を行った。その結果、頚椎の前後屈運動には位相差があり、正常頚椎では、前屈運動は上位椎間から始まり下位椎間に及ぶこと、不安定椎間の前屈運動は他の椎間に先駆けて始まることが判明した。連続X線撮影による頚椎椎間の動態解明は不安定性評価の新しい方法として期待できる。 3.頚椎用内固定具にの強度に関する力学的実験研究:平成5年度に作成した頚椎の経椎弓根スクリュー固定器具の強度試験の結果、腰椎用固定部の約60%の横径と圧さのチタン製で、頚椎に通常加わる負荷に充分耐えることが判明した。 4.頚椎用内固定具ならびに人工椎体に関する臨床的研究:新たに開発した経椎弓根スクリュー固定器具を臨床応用した。その結果、解剖学的研究に基づいて決定したスクリュー径(3.5mm,4.0mm,4.5mm)で、大部分の日本人頚椎において安全な椎弓根スクリュー固定の可能なことが実証された。また、チタン製であることにより、手術後のMRI検査に対応できることが確認できた。頚椎椎弓根スクリュー固定を対象疾患として頚椎損傷、転移性頚椎腫瘍などの後方固定などに用い、同法は頚椎にも安全に施行でき、多くの頚椎疾患の再建に有用であることを示した。頚椎用人工椎体の材料として決定したAW-Glass Ceramic製の胸椎・腰椎用人工椎体使用例の長期経過観察を行い、その安全性を確認した。
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