研究概要 |
I.頚髄・神経根の解剖学的研究 A.頚髄後方除圧後に生じるtethering effectの発生可能部位として,硬膜内および硬膜外の2部位が存在し,解剖学的研究からは,前者より後者の方が生じやすいと考えられた。 B.一神経根に属する最長前根糸長と最短前根糸長間の相関関係の研究から,術前に各神経根の最短前根糸長を求める方法を開発した。 II.臨床的研究 〔主発生機序の研究〕-椎弓側方拡大術式を利用し,硬膜切開術の効果を統計学的に検討した。 A.硬膜切開は,1)くも膜管容積拡大,2)後方除圧に伴う硬膜-神経根結合部の後内側移動阻害,3)後方膨隆硬膜の硬膜管外神経根部分牽引力減弱の3効果を有する。1),2)は硬膜内tethering effectを助長し,3)は硬膜外tethering effectを減じる。術後神経根障害の主因が前者ならば,硬膜切開によりその頻度は増加し,後者ならばその逆となると考えられた。 B.硬膜切開実施群では非実施群に比べ,術後神経根障害の頻度が統計学的有意差をもって減少した。この結果から,硬膜外tethering effectが術後神経根障害の主因をなす場合が多いと考えられた。 〔麻痺予防法の研究〕 麻痺予防法として硬膜外tethering effectに対しては硬膜切開術が有効であり,硬膜内tethering effectに対しては術前に最短前根糸長を求め,それが緊張しない程度の後方除圧度とすればよいと考えられた。
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