研究概要 |
頚髄後方除圧後の神経根障害には,術中操作による障害,椎弓や血腫による圧迫などにより発生するものの他に,脊柱管内で硬膜管〜神経根周囲の除圧が完全に行われたにもかかわらず発生するものがある。その原因として硬膜管内で神経根糸が後方に移動した脊髄に牽引される硬膜管内神経根糸係留現象が主因をなすと考えられてきたが,筆者はそのような硬膜管内係留現象の発生は稀であり,他に原因として,椎間孔内で周囲に癒着した神経根が後方移動した硬膜管により牽引される硬膜管外係留現象による硬膜牽引性神経根障害を考えねばならないことを指摘し,解剖学的研究と臨床的対比研究によりその存在を明らかにした。さらに硬膜切開減張術によりその予防が可能であることも明らかにした。平成6年度においては,術中硬膜圧測定装置を開発し,39例の術中硬膜圧の測定により,硬膜圧が一定値(30-40g重/mm^2)以上を示す症例に術後麻痺発生が見られる傾向があることを明らかにした。これは術中に予防的手段の必要性の有無を判断する資料となるものである。また,家兎を用いた電気生理学的実験により,硬膜牽引性神経根障害の存在と硬膜切開減張術の予防的効果を証明することを試みた。現在までに,家兎用実験電極と実験用硬膜圧測定装置の試作を行い,家兎数匹を用いて実験を行ったが,計測機器の改良や,麻酔などの実験条件の設定に時間を要し,実際のデータを出すには至っていない。平成7年度に実験を継続する予定である。
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