研究概要 |
低出力レーザーの鎮痛作用発現の機序に関し、生体膜において、神経細胞では、神経刺激伝達の抑制、電気的膜安定化としての静止膜電位の負荷の増大,脊髄後角第5層における刺激発生の抑制、赤血球膜における低張性溶血に対する抵抗性(物理的安定),低下した赤血球変形能の改善など既に前回科学研究費補助金(C01570858)により報告してきた。今回生体膜の膜成分であるリン脂質二重膜の物性にレーザー光線は影響するかdipalmitoyl phosphatidyl Choline(DPPC)の相転移温より調べたが非荷電のDPPC膜では相転移温に変化を認めなかった(J.Clin,Laser Met & Surg 11:191-195,1993)。膜安定化がイオンチャンネルを介するものであれば保存赤血球よりKイオンの流出,Naイオンの流入を抑える筈であると、保存赤血球より採血日,第1日,第2日,第3日と計4回3分,5分,10分,15分づつのHe-Neレーザーを照射し、無菌的に24℃保存で8日目まで細胞外Na、Kイオンの変動を調べたが、Kイオン流出,Naイオン流入をレーザー光線が抑える所見は得られなかった(未発表)。本年度(平成6年)は、荷電リン脂質膜(DMPG)での低出力レーザーの膜物性への影響、また蛋白構造物としてヘモクロビンに関し、酸素親和性,ヘモクロビン蛋白の構造変化へのレーザーの影響を調べ膜へのレーザー光線の効果を総括する。低出力レーザーの生体膜への影響は、膜の物性変化より生化学的酵素活性などから追求しないと駄目かと悩みも生じている。
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