研究概要 |
北里大学泌尿器科において得られた前立腺癌根治術標本は過去2年半で80例におよぶ。すべて全割標本としてあり、腫瘍体積、腫瘍起源、悪性度、浸潤度他の情報解析が可能であり、検討結果の学会、誌上発表を行った。特に臨床癌では欧米の報告と同様の特徴を認め、病理組織上有意の差異を認めなかった。 当初,adenomatous polyposis gene,retinoblastoma gene,c-metなどに注目し、DNA解析を行ったが、いずれもnegativeであり、変異、転座などの異常を認めなかった。現在、正常と腫瘍DNAの変化を対比し腫瘍部のmicrosatellite instabilityを検討中である。66例の症例検討結果では13%の頻度に異常を認めたが、いずれもリンパ節転移、骨転移などのある症例であり、統計上の有意の相関が認められた。腫瘍悪性度、臨床病期とは相関せず内分泌療法不応性癌でも頻度は同様であるため、microsatellite instabilityが独立した進行因子である可能性が示唆された。 さらに、DNA-ploidyに関しては、個々の腫瘍の解析を終えた段階であり、他の病理学的諸因子やmicrosatellite instabilityとの相関を現在多変量解析を用いて検討中である。
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