慢性化した前立腺炎患者6名から得た前立腺液中のマクロファージと同一患者から得た末梢血中の単球をプラスチック板上で2週間培養したところ、末梢血中の単球のみを培養した場合に比し、平均11.3倍の単球・マクロファージ系の細胞が生き残った。また培養2週間目の培養上清中のサイトカインを測定したところ、1L-1Bのみが実験群(前立腺液中のマクロファージと末梢血中の単球を混合して培養)はコントロール群(末梢血中の単球のみを培養)の平均2.11倍と高値であった。 前立腺液中のマクロファージのみを培養した際に、培養2週間後に生存する細胞数は極めて少ないことから、末梢血中の単球に前立腺液中のマクロファージを加えた際の培養2週間後における生存する細胞数の増加は、単に前立腺液中のマクロファージの数が加わったためでないことは明らかである。以上の結果から前立腺液中のマクロファージが前立腺炎を長期慢性化させていることが示唆され、その機序として前立腺液中のマクロファージが直接か、あるいは培養液中に少量含まれる自己リンパ球を介して分泌されるサイトカインが考えられる。今回実験群でlL-1Bが高値であったが、これが単球・マクロファージ系の細胞を刺激する原因か結果かは今後の検討課題である。慢性化した前立腺炎患者で前立腺液中のマクロファージが多数認められる症例が少いため、統計学的有意差の検討を行える症例数を集めるのには、さらに時間を要するが、単球マクロファージ系の細胞の刺激を抑制することで前立腺炎を治療させることを目指して、本研究を継続中である。
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