研究概要 |
さまざまなミオパチー、網膜変性、視神経症などの症例の臨床所見を集積し、遺伝子所見を検索した。得られた結果からミオパチーにみられる眼病変と遺伝子異常との関連について総括した。1.網膜変性とmtDNA:mtDNAの欠失を示すKSSおよびCPEO計7例に網膜変性所見を認めた。mtDNA点突然変異を示す疾患では、MELASの6例中2例、MERRFの3例中1例およびレ-ベル病20例中2例に黄斑変性を認めた。mtDNAの欠失および点突然変異はともに網膜変性と関連する。2.視神経症とmtDNA:両眼性視神経症40例の末梢血試料についてmtDNAを検索した。20例にnp11778変異(ND4変異)を認め、レ-ベル病と確定診断した。mtDNA/np3460,np15257変異は全例が陰性であった。本邦ではND4変異以外の点突然変異の検出頻度は低い。ホモロジー解析によると、ND4変異は酵素基質との結合能を低下させることが示唆された。レ-ベル病4例に長期間の呼吸鎖補完療法を行って視野の経過をみると、投与開始2年を経過した時点から徐々に改善する傾向がある。レ-ベル病症例で24時間心電図(Holter心電図)を記録すると、睡眠時の洞性不整脈を認める症例があった。不整脈の他にミオパチーや多発性硬化症などの所見を示す症例があることから、レ-ベル病はmtDNA異常を基盤とする全身疾患とみなされる。3.糖尿病とmtDNA変異:糖尿病の症状および検査所見を主病像とする2症例の骨格筋あるいは眼組織試料にMELASに検出されるmtDNAnp3243点突然変異が検出された。ミトコンドリア異常症のあらたな側面として、症例を蓄積して検討する価値がある。4.筋緊張性ジストロフィ:筋緊張性ジストロフィ11例の眼科的所見および遺伝子異常(19番染色体上のCTG-repeat延長)を検討した。眼科的徴候として、白内障および網膜変性が高頻度にみられた。数百ベース程度のCTG-repeat延長を示す成人発病例において多彩な眼科的徴候を示す傾向がある。
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