研究概要 |
【目的】前年度、マウス神経芽腫の肝転移モデルを用いてω3系脂肪酸の肝転移抑制効果について報告した。今回、その作用機序を検討する目的で以下の実験を行った。 【方法】マウスに無脂肪食を1週間摂取させた後、普通食投与群、低脂肪食投与群、高ω3系脂肪酸食投与群の3群を作製した。それぞれ2週間、摂取させた後、腹腔マクロファージ、脾マクロファージを採取し、LPSで刺激し、培養液上清中のprostaglandin E2(PGE2),transforming growth factor β(TGFβ)を測定した。 【結果】低脂肪食投与群は普通食投与群に比べ、PGE2,TGFβともにその産生量が高値であった。高ω3系脂肪酸食投与群は普通食投与群に比べ、PGE2の産生は抑制されたが、TGFβの産生は抑制されなかった。 【考案】ω3系脂肪酸によるPGE2産生抑制は、ω3系脂肪酸が細胞膜リン脂質に取り込まれ、アラキドン酸からの2シリーズ産生からω3系脂肪酸による3シリーズへ変化したことによると考えられる。PGE2は免疫系細胞に対し、種々の抑制効果を持っており、ω3系脂肪酸によるPGE2産生抑制は、転移抑制と関連があると思われた。TGFβは従来、創傷治癒との関連で注目されてきたが、最近、免疫抑制効果も明らかとなった。今回の実験ではTGFβの産生は抑制されなかったが、TGFβは、細胞増殖を抑制することも明らかとなっており、アポトーシスとの関連性も指摘されていることから今後も癌増殖抑制、転移抑制の面から検討を行っていく必要があると思われた。
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