破骨細胞プロトンポンプによるH^+分泌の電気生理学的検出

1993 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 05807172
• 研究機関: 長崎大学
• 研究代表者: 岡田 幸雄 長崎大学, 歯学部, 助教授 (60136687)
• キーワード: ラット / 破骨細胞 / パッチクランプ法 / 骨髄細胞 / プロトンポンプ

研究概要

新生仔ラットの大腿骨と脛骨から骨髄を取り出し、パイペッティング処理により細胞を遊離させた。破骨細胞の同定のために、酒石酸抵抗性酸性ホスファターゼ(TRAP)染色を用い、その存在を確認した。また、アクリジンオレンジという色素を細胞外液中に加えると、この色素を取り込んでオレンジ色に染まる細胞とほとんど染まらない細胞が存在した。染まった細胞は、プロトンポンプ活性によりオルガネラのpHが酸性に傾いたことを示すものと考えられた。しかしながら、この色素を細胞外液中に含ませるとパッチクランプ法のギガシール形成が非常に困難になるので、破骨細胞の電気生理学的性質を解析する時にはこの色素は使用できないと判断された。遊離した破骨細胞を倒立顕微鏡のステージ上の実験容器中に移し、KClを満たしたパッチ電極で細胞を吸引し膜を破ってホールセルパッチクランプの状態にした。単離破骨細胞は、-80mVの保持電位からの脱分極電位変化に対してほとんどイオン電流と考えられる電流成分を示さなかった。逆に、-40mVの保持電位からの過分極性電位変化に対しては非常に大きな内向き電流を発生した。このように破骨細胞は内向き整流性を示すことが判明した。この実験結果は、他の研究者のそれと一致する。対照実験としてスナネズミ成体の骨髄細胞の電気生理学的性質を解析した。成体骨髄細胞中にも巨大な細胞が存在し巨核球だと考えられる。破骨細胞とは対照的に、この細胞は脱分極性電位変化に対して非常に大きな電流を発生したが、過分極性変化に対してはほとんどイオン電流を示さなかった。すなわち巨核球は外向き整流性を示した。このような電気生理学的性質の違いから破骨細胞と巨核球を識別できることが示唆された。

研究成果

• [文献書誌] Okada,Y.,et al.: "The ionic basis of the receptor potential of frog taste cells induced by water stimili." J.exp.Biol.174. 1-17 (1993)
• [文献書誌] Restrepo,D.,et al.: "Human olfactory neurons respond to odor stimuli with an increase in cytoplasmic Ca^<2+>." Biophys.J.64. 1961-1966 (1993)
• [文献書誌] Okada,Y.,et al.: "Contribution of proton transporter to acid‐induced receptor potential in frog taste cells." Comp.Biochem.Physiol.105A. 725-728 (1993)
• [文献書誌] Okada,Y.,et al.: "Voltage clamping of a frog (Rana catesbeiana) taste cell with a single micro‐electrode." Comp.Biochem.Physiol.106A. 37-41 (1993)
• [文献書誌] Miyamoto,T.,et al.: "Cationic and anionic channels of apical receptive membrane in a taste cell contribute to generation of salt‐induced receptor potential." Comp.Biochem.Physiol.106A. 489-493 (1993)
• [文献書誌] Restrepo,D.,et al.: "Odorant‐regulated Ca^<2+> gradients in rat olfactory neurons." J.gen.Physiol.102. 907-924 (1993)