研究概要 |
1.歯牙をサンプルとした場合には十分な抽出DNA量が得られないため、PCR法による分析が適切であり、前年度の研究においてD4S43領域にPCR法によりVNTRの新たな変異があることが見出された。今年度この変異のシークエンスを試みたところ、GCrich領域であるために全体の塩基配列の決定は極めて困難であったが、制限酵素切断により変異の位置については範囲を狭める事ができた(DNA多型 2:64-68,1994)。 2.歯牙抽出DNAと血液抽出DNAの両者をサンプルとし、D4S43、D1S80、D12S67、DYS19のそれぞれの領域における多型の比較を行ったところ、高い一致率を示したものの、サンプルによっては過剰なバンドが出現したりターゲットバンドが欠落するものも存在した(日法医誌 48:241、1994)。 3.個人識別における基本的事項である性別判定に歯からのDNA分析を応用すべく、Alphoid Sa-tellite FamilyをPCR法により増幅して性別判定に応用するWitt & Erickson の方法を試みた。歯髄および歯牙硬組織のいずれを試料とした場合でも増幅効率が良く、制限酵素切断やDual PCR法を併用する事により正確な性別判定が可能であったが、歯牙硬組織男性試料の約14%に判定不能な ものが存在した(歯基礎医会誌 36:160、1994)。
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