象牙質と複合レジンとの接合状態を観察するのに用いているレプリカ法を応用し、切削象牙質面からの象牙細管内液の滲出状況を観察した。この方法は、特別な機械を必要とせず、患者に苦痛を与えることなく、象牙細管内液の滲出状況を観察することができた。このレプリカ法を用い、まず第一に、新鮮抜去牛下顎前歯、人新鮮抜去歯や人生活歯において、各種象牙質処理法、象牙質前処理材やボンディング材が、象牙細管内液の滲出に与える影響について検討した。その結果、象牙質面を酸処理し、十分に水洗乾燥すると、象牙質表面への象牙細管内液の滲出速度が遅延され、象牙質と複合レジンを接着・接合させるに際して、象牙細管内液の影響を少なくする効果のあることが判明した。この研究によって、今までほとんど研究されていなかった、象牙細管内液の滲出に対する酸処理の効果が明らかになった。次いで、人生活歯にインレー窩洞を形成し、形成直後の象牙質切削面からの象牙細管内液の滲出状況を検討した。歯の部位や状態によって、滲出状況に差は見られるものの、すべての症例において、象牙細管内液の滲出が観られた。これら形成歯に、テンポラリーインレーを装着し、2時間後に、これらテンポラリーインレーと仮着材を除去し、象牙細管内液の滲出状況を観察したところ、2週間後においても象牙細管内液の滲出が認められた。これら生活歯において、象牙細管内液の滲出に対する歯質強化材の効果については現在検討中である。今年度の研究計画は、ほぼ予定通り遂行され、これらの研究結果については、すでに学会で公表し、現在論文を製作中である。
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