研究概要 |
骨芽細胞におけるオステオカルシンの産生・分泌におよぼす因子の影響、及びヒト分離破骨細胞による骨吸収実験系を確立し遊離するオステオカルシンの分子種の検討を行った結果、オステオカルシンの骨代謝に占める役割について以下のことを明らかにすることができた。 ヒト骨膜由来骨芽細胞様細胞およびヒト骨肉腫由来骨芽細胞様細胞株MG63の増殖が一定になってから1,25(OH)_2D_3を加え、培養し、培養上清のオステオカルシン値を測定した。オステオカルシン値の変化は、細胞層のCa濃度と強い相関が認められた。ヒト骨芽細胞が分泌するオステオカルシン分子種はインタクトオステオカルシンが主であるが、一部オステオカルシンプロペプチドの分泌も認められた。また、培養の経時的変化を追跡し、ヒト骨芽細胞上清中のインタクト/プロオステオカルシン比は、細胞の石灰化を反映する可能性を示唆している。一方、ヒト破骨細胞と骨片との培養との結果、破骨細胞数に比例して、インタクトおよびN末端オステオカルシン測定系にて検出される分子種の遊離の増加がみられた。その際、骨から遊離するオステオカルシンは、N末端オステオカルシンが主であった。このことからN末端オステオカルシンの出現は、骨吸収を反映するものと考えられる。また、ヒト芽球からの破骨細胞形成系でのオステオカルシンは多核の破骨細胞様細胞の形成を促進した。したがって骨代謝におけるオステオカルシンの作用は、骨芽細胞により合成されるオステオカリシンによって石灰化を促進し、骨基質中に蓄えられたオステオカルシンは、破骨細胞による骨吸収でオステオカルシンフラグメントが出現する可能性が示唆された。これらの事実は、骨芽細胞により産生されたオステオカルシンが骨芽細胞による石灰化および破骨細胞の形成を制御することにより、骨の代謝調節に重要な役割を演じていることを示唆するものと考えられる。
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