1.目的・方法 スピーチエイドを用いた鼻咽腔閉鎖機能賦活訓練法の確立のために、今年度はスピーチエイド装着時における鼻咽腔閉鎖機能の調節機構に対する発音時の空気力学的要素の関与の様態を口蓋帆挙筋活動を指標として検討したた。研究は、スピーチエイドを装着している症例の中から、筋電図採取に耐え得る年齢に達している症例を被験者として選択し、各被験者が日常使用しているスピーチエイドのバルブ中央を穿孔し(研究用スピーチエイド)、発音時に穿孔部の開放面積を変化させた際の口腔内圧、鼻腔気流量ならびに口蓋帆挙筋活動をポリグラフによって測定記録した。分析は、口蓋帆挙筋活動を目的変数とし、口腔内圧および鼻腔気流量を説明変数とする多変量解析を行なうことによって、口蓋帆挙筋活動に対する各空気力学的要素の関与の程度を検討した。 2.結果 研究用スピーチエイド装着時に、バルブ穿孔部を経過して発音時の呼気が鼻腔へ漏出した際に口蓋帆挙筋活動は上昇した。口蓋帆挙筋活動の変化には、鼻腔漏出気流量と口腔内圧の両方が同時に関与し、鼻腔気流量の方が強く関与することが多変量解析の結果明らかになった。このことは、スピーチエイド装着時に鼻腔に気流を流入させると、口蓋帆挙筋活動を賦活できる可能性を示唆している。平成6年度は、この結果に基づいて、スピーチエイド装着症例における鼻咽腔閉鎖機能の賦活法の試案を作成し、試案に基づいて機能訓練を行ない、その効果について検討する。
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