研究概要 |
インプラントヒ-ティングシステム(IHS)を用いた温熱療法とCDDPを用いた化学療法との併用療法の併用時期について,IHSの加温とCDDPの同時投与群,IHSの加温先行後CDDP投与群,CDDP投与先行後にIHSの加温群に分類し抗腫瘍効果を検討した.その結果,同時併用群において抗腫瘍効果が高かった.その病理組織学的検討を行う予定である.さらにIHSの温熱刺激による口腔粘膜上皮の局所免疫機能を調べるために,マウス舌を用いてランゲルハンス細胞およびThy-1陽性細胞の動態を検討した.IHSによる舌の温度分布はインプラント針より3mm以内において温熱療法の有効とされる43°C以上の温度が得られた.ランゲルハンス細胞は温熱刺激により急激に増加し,加温3時間後にピークに達し,その後減少して7日目には対照群とほぼ同じになった.Tyh-1陽性細胞も温熱刺激により増加し,加温5分後に対照群とほぼ同じになった.ランゲルハンス細胞とThy-1陽性細胞の局在については,Thy-1陽性細胞は上皮内でランゲルハンス細胞と近接しているのが認められた.その割合は温熱群に多く,対照群との比は1.81:1であった.また温熱刺激後,舌の粘膜上皮は粘膜固有層と一部分断されており,上皮細胞には変性,空胞化が認められた.上皮内にはレンゲルハンス細胞やリンパ球が多数遊走しており,粘膜固有層にもリンパ球が認められた.電顕観察においてThy-1陽性細胞がランゲルハンス細胞と近接しており,しばしばこれらの細胞が上皮内でクラスターを形成していた.以上のことより粘膜上皮における温熱刺激は局所免疫機能を亢進させることが示唆された.臨床的検討としてはIHSと化学療法との併用療法を2例の口腔癌患者に用いて検討したところ,2例とも治療後の病理組織学的検討においても腫瘍細胞はみられず,著明な効果が得られた.
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