研究概要 |
顎矯正手術を施行する場合、術前において術前において術後顔猊予測をより正確に行う必要がある。従来、私たちは、この目的のために側方セファロによるペーパーサージュリー,ビデオサージュリー,顎顔面歯列模型によるモデルサージュリーを施行してきた。しかし顔猊の輪郭ならびにオトガイ部の位置に関しては、ほぼ予測が可能となってきたが、口唇ならびにその周囲における微妙な予測が不可能であった。 そこでこの点を明確にする目的でまず正常咬合者における硬組織・軟組織移動率を求めた。 私たちは、正中矢状面で下顎の垂直的・水平的移動に対する口唇周囲の正確な軟組織変化量を求めることを目的として、正常咬合者の女性18名を対象として、非接触型三次元曲面形状計測装置を用いて顔猊軟組織を三次元的にまず計測した。本研究では、下顎の移動は、予め咬合器上で作製されたバイトプレートにて下顎限界運動内で、下内へは9mmまで、前方へは7mmまでの範囲内で1mm間隔で下顎を移動させたときのそれぞれの口唇軟組織移動量を求めた。そしてその移動形式は、【.encircled1.】中心咬合位が垂直下方に4mmまで、【.encircled2.】中必咬合位から前方向45°方向に前方4mm、下方4mmまで、【.encircled3.】中心咬合位から下方に2mm移動させ、その位置から前方に7mmまで、【.encircled4.】中心咬合位から下方に3mm移動させ、その位置から前方に7mmまで、【.encircled5.】中心咬合位から下方に4mm移動させ、その位置から前方に7mmまでの上通りとした。下顎の移動に伴った個々の顔猊軟組織の三次元データを数値解析ソフトウェア上で、フィッティングプログラムを用いて移動前後の顔猊の非移動部を三次元的に重ね合わせたのち、正中矢状面の口唇軟組織上に設けた21ポイントの点の移動を一次回帰直線として求め、有意差検定を行った。 以上の下顎の移動形成と口唇軟組織の移動量を比較検討した結果、下顎の垂直下方への移動に対しては軟組織の仲展には許容があることがわかった。また。下顎の前方への移動に対しては、口裂部より上方では硬組織・軟組織移動率が1より小さかったが、下方ではその移動率が1前後の係数であった。しかも、本装置により硬組織・軟組織移動率が1以上を示す部位が多々見受けられることが明らかとなり、従来の報告よりも正確な硬組織・軟組織移動率を求めることができた。
|