顔貌軟組織の形態計測においては、種々なる諸条件が存在し、それが計測値を大きく左右する要因となることが明らかである。ゆえに、従来より制度の高い計測装置が望まれていた。そこで、今回私たちは、本実験に使用した非接触型の三次元曲面形状計測装置が、非計測物体の1mmの動きまで正確に測定できることを確認した上で本装置を用いて、まず下顎の二次元的な移動に対する口唇軟組織移動量の一次回帰方程式を求めることにした。 本研究では、正中矢状面で下顎の垂直的・水平的移動に対する口唇周囲の正確な軟組織変化量を求めるために、正常咬合者の女性15名を対象として、非接触型三次元曲面形状計測装置を用いて、あらかじめ咬合器上で作成されたバイト・プレートにて下顎を、中心咬合位からFH平面に対して垂直下方に1mm(0〜4mm)ずつ、またそれぞれの位置から前方に1mm(0〜7mm)ずつ誘導させ、それぞれの顔貌軟組織を三次元的に計測した。計測された個々の顔貌軟組織を数値解析ソフトウエア上で、フィッティングプログラム(3D-SPHIIU)を用いて移動前後の顔貌の非移動部を三次元的に重ね合わせた後、正中矢状面の口唇軟組織上に設けた21ポイントの二次元的な移動量を算出する回帰方程式を求めるため単回帰分析を行った。その結果、下顎の単純な移動に対する正確な軟組織移動率を求めることができた。 今回の結果を基にして、顎変形症患者の従来の術後顔貌予測方法に追加してさらに口唇周囲の予測方法を試みた。
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