咀嚼筋の活動すなわち「咬む」という機能は、顎顔面形態ひいては不正咬合や顎関節症などと強く関連している。そこで、我々は、終日24時間の咀嚼筋筋電図を日常生活状態において記録し分析するシステムを開発した。本システムを用いて各種不正咬合患者のデータ収集を行うにあたり、その比較対象となる標準値を得る必要があると考え、成人における咀嚼筋の平均的な活動量についてすでに調査を行った。が、成長途上にある若年者の咀嚼筋活動については依然として不明であるため、本研究では、小学、中学、高校生の終日の咀嚼筋活動について調査し、若年者の一般的な正常範囲を得ることとした。 被験者は、著しい骨格性不調和を伴わない若年者の叢生歯列患者から選択することとした。現在までに、7歳1名、8歳2名、9歳2名、15歳1名の計6名について、終日筋電図記録分析システムを用い、連続24時間の咬筋筋電図を延べ9日間記録し、咬筋活動回数および活動時間を集計した。 その結果、終日24時間にレベル2(随意的最大咬みしめ時放電圧の1/4に相当する)に達したバーストの出現回数は、7歳女児で922回、137秒、8歳女児で619回、51秒、9歳女児で1105回、158秒であった。これは、成人女子の平均値2356回、419秒と比較すると、回数で約1/2-3、時間で約1/3-8とかなり少ない傾向にあった。しかし、9歳男児では1857回、580秒、14歳男児では2658回、426秒と成人男子の平均値1937回、357秒とほぼ同等の筋活動量を示した。 このように、男児に比べ女児で筋活動量が少なく、この差が成人男女間の差よりも大きい傾向が認められたものの、現段階では、被験者数が少数のため結論を導くことは困難である。当初の計画通り、平成6年度も引き続きデータ収集を行い、現在までに得られた結果と併せ、検討を進めていく予定である。
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