研究概要 |
1.アラニノールおよびフェニルグリシノールをアセチル化して化合物1a,bを得た.-78℃にてフッ素ガスによるフッ素化を1a,bに施してN-フッ素化体2a,bを得た.しかし,これらは安定性に欠けるため,クロマトグラフィーによる精製後の単離収率は非常に低いものであった. 2.光学活性体の入手が容易な(S)-(-)-α-フェネチルアミンに塩化トシルを反応させてトシル体3とした.3に対するフッ素化反応は微妙な反応条件の検討を必要としたが,最終的にはフッ化過クロリルをフッ素化剤として用いることで,N-フッ素化体4を収率52%で得た.なお,4は室温でも或る程度安定に存在することが明らかとなった.4のフッ素化能を調べるために,数種の活性メチレン化合物に対するフッ素化を行ったところ,基質や反応条件によってまちまちながらも,目的とするフッ素化体を得ることができた.しかしながら,ここで得たモノフルオロ体の不斉収率を測定するには至らなかった. 3.サッカリンに二種の異なる有機金属試薬を順次反応させることで5a,bを合成した.これらのカンファースルホンイミド体経由による光学分割を試みたところ,5aのみに関して対応する光学活性体を得た.そこで光学活性5aにフッ素ガスを反応させて光学活性フッ素化体6aを合成した.6aと種々のエノラートとの反応を検討した結果,6aをα-テトラロン誘導体のフッ素化に適用した場合において,不斉収率が74%,化学収率が42%で対応するモノフルオロ体の不斉合成に成功した.
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