研究概要 |
1.新型のフッ素化試薬の分子設計にあたり,高い面選択製が期待される5員環構造に着目して,電子求引性のカルボニル基を選んだ.光学活性体の入手が容易な(R)-フェニルグリシンおよび(R)-システインエチルエステルから1および2を,また,メルカプト酢酸とベンズアルデヒドおよび炭酸アンモニウムを反応させる方法で化合物3を合成した.1〜3に対して,フッ化過クロリルもしくはフッ素ガスを反応させることによりN-フルオロ体4〜6の合成を試みたものの,目的物の存在を確認するには至らなかった.この結果から,窒素にカルボニル基を隣接させたアミド構造を断念し,次にスルホンアミド構造の化合物を検討した. 2.アラニンおよびフェニルグリシンのエステルを原料として化合物7および8を合成し,フッ素ガスを用いてフッ素化を行ったところ,目的のN-フッ素化体9および10を得た.しかし,それらの単離収率は非常に低いものであった.次に,(S)-(-)-α-フェネチルアミンを原料として11を合成した.11に対してフッ化過クロリルを用いるフッ素化反応を試みた結果,N-フッ素化体12を収率52%で得た.12を数種の化合物に対するフッ素化に適用したところ,目的するモノフルオロ体を得たが,それらの不斉収率を測定するには至らなかった. 3.そこで,サッカリンより誘導した13をカンファースルホンイミド体へと誘導し,二種のジアステレオマ-を分離する方法で13の光学活性体を得た.次に13にフッ素ガスを作用させて14を合成した.光学活性の14を用いて種々のエノラートとの反応を検討し,最も良い結果として,(+)-14をα-テトラロン誘導体に対するフッ素化に適用した場合に,不斉収率74%,化学収率42%で目的のモノフルオロ体を得るに至った。
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