研究概要 |
人工膜ワクチン試作のための基礎研究を行った。先ず細胞性免疫誘導とアジュバント活性を有するMDP(ムラミルジペプチド)の両親媒性誘導体とリン脂質より成る混合ベシクルの形態と性質に関する研究を行った。2本の炭化水素鎖を有するMDP誘導体は混合比40%以下では直径200nmの1枚膜ベシクルを形成した。混合比60%以上ではオリゴラメラベシクルまたは繊維状の凝集体を形成した。1本の炭化水素鎖を有するMDP誘導体は混合比の増加につれて200nmからサイズを減じ、混合比40%を越すと50nm程度の小さい1枚膜ベシクルを形成した。また2本鎖のMDP誘導体では膜のバリヤ-能におよぼす影響は小さかったが、1本鎖の誘導体では混合比の増加とともに著しくバリヤ-能を低下させた。次にインフルエンザウィルスの抗原蛋白質(HA,NA)をベシクル膜に導入するための調製条件の検討を行った。抗原蛋白質のベシクル膜への組み込み量は脂質の組成、脂質の濃度、可溶化に用いた界面活性剤の種類により異なった。界面活性剤としてコール酸ナトリウムを用いたとき組み込み効率は最も高かった。コレステロールは組み込み効率を高める方向に働き、また脂質濃度が低いほどベシクル1個あたりの組み込み量が増加した。組み込まれた抗原蛋白質はインフルエンザウイルスと同様表面にスパイク状につきだした形態をとっていることを電子顕微鏡より確認した。またインフルエンザウィルス同様赤血球凝集活性を有していることおよび電気泳動像から再構成時の抗原蛋白質の分解は無いものと考えられる。
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