研究概要 |
LECラット血清中に肝炎発症に先立って、肝ミクロゾームのプロテインジスルフィドイソメラーゼ(PDI)に対する自己免疫性抗体の出現を明らかにした。また、実験的薬物性肝炎発症のモデル動物で、肝炎発症と抗PDI抗体の関わりについて検討をしてきた。本年度は以下の検討を行なった。 (1)自己免疫性抗PDI抗体と肝炎発症に対する薬物の作用・効果を検討する目的で、免疫抑制剤であるシクロスポリン、銅排出促進剤であるD-ペニシラミンと漢方製剤(TJN-101,[(+)-(6S,7S,R-biar)-5,6,7,8-tetrahydro-1,2,3,12-tetramethoxy-6,7-dimethyl-10,11-methylenedioxy-6-debenzo[a,c]cyclooctenol])をLECラットに23週間投与し、血液の生化学検査値、抗PDI抗体価を調べた。その結果、対象群で半数(8匹中4匹)が肝炎で死亡したが、シクロスポリン投与群では7匹中1匹、D-ペニシラミン投与群では死亡個体は認められなかった。TJN-101投与群では7匹中4匹が死亡したが、死亡時期が10週程度延長した。いずれの群においても抗PDI抗体は死亡個体において有意に高い価を示した。これらのことより、抗PDI抗体は致死量の指標となるが、生化学検査値により判断される肝炎の発症・進展とは相関を示さないことが明らかとなった。 (2)抗PDI抗体のヒト性肝障害の診断マーカーとしての利用を検討する目的で、ヒト肝炎、肝硬変、アルコール性肝障害患者等の血清を用いてラジオイムノアッセイにより自己免疫性抗PDI抗体について測定した。その結果、中等度と重症のアルコール性肝障害患者においてそれぞれ46%、54%が、健常人(8%)に対して有意に高い値(2SD以上)を示した。肝硬変患者では64%であった。急性肝炎、SLE、肝癌では有意に高い値を示さなかったことより、慢性の肝臓疾患の診断マーカーとなることが示された。 1、2で得られた結果については、それぞれ投稿中である。
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