研究概要 |
FMR-1遺伝子のクローニングにより、脆弱X症候群の診断は染色体からDNAに変わった。しかし、集団レベルにおいて脆弱X染色体がすべてFMR-1遺伝子のCGG反復数の延長を持っているか否かについてのデータはなかった。FRAXA座位近傍のFRAXE,FRAFの座位にも脆弱部位が発見され、通常の脆弱X染色体像においては区別できない可能性が高い。また、脆弱X染色体の検出感度は必ずしも100%ではないので、これまでの染色体による集団調査のデータは脆弱X症候群の頻度に関してunderestimateである可能性もある。そこで、すでに通常の染色体検査および脆弱X染色体検査が実施されている精神遅滞集団を対象に、FMR-1のCGG部位のDNA検査を行うことにより、染色体検査とDNA検査との結果の対応を検討した。対象は、血縁関係のない296人の男性と129人の女性である。その結果、7人の男性と2人の女性においてFMR-1遺伝子のCGGのfull mutationが検出された。それらの人はいずれも染色体検査において脆弱X染色体が検出されており、新たに発見された脆弱X症候群患者はいなかった。逆に脆弱X染色体が発見された人はすべてFMR-1のCGGのfull mutationレベルの異常を持っていた。CGGの延長の度合いと脆弱X染色体の検出頻度は弱い相関があった。以上より、この集団で見る限り、脆弱X染色体検査の結果とFMR-1遺伝子のCGG反復配列の異常延長は完全に一致していることが明らかとなった。また、FRAXEによる精神遅滞は頻度は低いことが推測された。さらに、この検査においてpremutationレベルの人は検出されなかった。これまでの結果と合わせるとすでに1500本のX染色体を調べたことになるが、まったくpremutationは検出されなかったので、日本人においてはFMR-1遺伝子のCGG反復配列に関してpremutationの頻度が低い可能性が示唆された。
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