fragile X症候群の病因遺伝子であるFMR-1遺伝子の5'非翻訳領域に存在するCGG反復配列を、日本人の一般集団、精神遅滞集団および精神分裂病患者を対象に解析した。CGG反復配列の一般集団で最も頻度の高いアレルは白人で29〜31回反復(最頻30回)、日本人では29〜30回反復(最頻29回)で、ほぼ同じだった。ところが、白人では反復数の少ない20回反復付近に第二の頻度のグループがあるのに対して、日本人では反復数の多い側の36回反復に第二の頻度のグループがあった。FMR-1遺伝子を挟むマーカーFRAXAC1とFRAXAC2のハプロタイプ解析により日本人のfragile X症候群のハプロタイプの約半数はCGG36回反復と同じハプロタイプであった。よって、日本人のfragile X症候群はこのグループから由来しているものがかなりあることが推測された。CGG反復配列はCGGだけが反復しているのではなくところどころAGGが入っており、その入り方に一定のパターンがある。36回反復配列のアレルのCGG内の配列を調べたところ、(CGG)_6の単位が挿入されていることが明らかとなった。このパターンは白人にはほとんどないことから、白人との分岐以降発生したと推測される。精神遅滞集団ではCGG反復数は男性でfull mutation領域が有意に一般と比べて多かったが、それ以外では一般集団と差はなかった。精神分裂病集団では一般集団と差はなかった。日本人において約1600本のX染色体を調べたことになるが、premutationは発見されなかった。さらに、DNA検査とfragile X染色体検査は完全に一致した。よって、FRAXEの頻度はFRAXAに比べて低いことが示唆された。
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