先天性無痛無汗症において、神経成長因子受容体(NGFR)の遺伝的異常の有無を検討するために、まず患者末梢血液中のリンパ球をEBvirusにより株化した。つぎに、ヒトのNGFR遺伝子のエキソンに対応するプライマーを設計した。当初、NGFR遺伝子のmRNAは、神経系の細胞にのみ発現していると考えられたので、遺伝子DNAを患者のリンパ芽球から抽出して、NGFR遺伝子のエキソン-イントロン結合部を含んだ六つのエキソン領域をポリメラーゼ連鎖反応(PCR)法で増幅することを試みた。しかしながら、これまでの報告ではイントロン部分の配列について詳細に調べられていないため、これに対応するプライマーを合成することは困難であり、そのため遺伝子DNAを用いて、NGFRの遺伝子変異をエキソンの全配列について検討することは不可能であった。そこで、リンパ芽球から精製したRNAを、ランダムヘキサマーをプライマーとして、逆転写酵素によりcDNAに変換し、これをテンプレートにしてPCR法により、NGFR遺伝子の翻訳領域をいくつかの断片に分け、増幅してみたところ、対応するDNA断片が得られた。現在、患者の全翻訳領域について、オーバーラップする断片を用いて、その遺伝子変異の有無を検討している。
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