研究概要 |
私どもは今回、筋ジストロフィー症の遺伝子診断の目的で、Chamberlainらに加えて、BeggsらのプライマーおよびPm部分に対応するプライマーの3種を用いて、合計17種類のexonについてジストロフィン遺伝子の欠失について検討した。欠失の存在は3回以上PCR法を繰り返して確認した。特にexon8,19,45,50,51およびPmについては、プライマー3対ずつを用いた増幅処理により欠失の有無を再確認した。デュシャン・ベッカー型(DMD/BMD)では20例中15例(75%)に部位・長さが一様でないが欠失が検出された。欠失の頻度が高かったのはexon47(10例,50%)であり、exon45,47,49のいずれかを欠失しているものは12例(60%)であった。Limbgirdle(LG)では17例中2例(12%)の男児症例で欠失が認められた。うち1例ではexon45,47の欠失がみられDMD/BMDである可能性は否定できない。もう1例についてはenon3,4,6,8,13の欠失がみられ、DMD/BMDでみられた欠失のパターンとは異なっていた。他の病型では14例について検討したが、ジストロフィン遺伝子の欠失は認められなかった。以上の結果より、PCR法を用いた診断法はDMD/BMDの診断に非常に有用であると結論した。また、DNAの抽出はフェノールのみで行うより、フェノール/クロロフォルムを用いた方が再現性が良いことも判明した。さらに、1組のプライマーでは増幅されてもMultiplexPCR法では、欠失として観察された症例もあったことから、PCR法による診断に加えサザンブロット法や連鎖解析を併用し、さらに臨床所見や病理所見をも加味して診断することが重要である。最後に、今回検討時にLGやFCMD患者ではartifactの欠失がみられることがあったが、これは40例の健常人では1例のみであったのと比較して明らかに高頻度であり、このことがこれらの疾患と何らかの関係があるかを、さらに検討をする予定である。
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