本研究の目的は、家庭にいる痴呆性老人と主たる介護者である家族との日常生活における関係性をとらえ、両者にとってのよりよい生活の質を追究していくものである。 1年目は、痴呆性老人と主たる介護者である家族との日常的な関わりの実態を質的に観察した結果から、両者の相互作用の中で起こっていることは何かを明らかにすることを目的とし、2年目は1年目の結果を土台とし、痴呆性老人と介護者にとってよりストレスの少ない相互作用をとるための、介護者による老人への関わり方を検討し、関わりのモデルを開発することを目的とした。 相互作用を観察したケースへ訪問し、面接データの質的分析した。その結果、1年目の結果に加えて、介護者の役割関係による相互作用の特徴がみられた。例えば、介護者が娘の場合、相互作用カテゴリーのうち「穴探し」「融和」「対等」が多く、また「抵抗」は少ないが「穴掘り」「摩擦」も多いという、肯定的にも否定的にもあらゆる形の相互作用がみられた。嫁の場合は、あまり「穴探し」をせず、「穴掘り」「摩擦」が多く「抵抗」が見られる場合がある、というものである。関わりモデルの開発まではいたっていないが、関わり方への示唆として研究結果からいえることは、まず痴呆性老人との相互作用は、家族による老人への関わり方次第で変化するものであるということがみられた。さらに具体的には、「穴掘り」のような互いにストレスになる相互作用をできるだけ少なくすることが望ましく、そのために、介護者が痴呆性老人のあいまいさを追求しないようにすることや、老人の思いを受けとめるようにするなどという家族の関わり方として要点となることが示唆された。
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