子どもの発達段階ごとの消費者技能の発達とその影響要因を明らかにするために、自記式質問紙法を用いた縦断的調査を企画した。3年度計画の初年度である平成5年度は、基準となる学年を対象として調査を実施する予定であった。しかし、調査票の作成にあたり、発達の指標となる調査項目の有効性の再検討の必要性を認識し、調査項目の検討をはじめとする調査項目の整備など縦断的調査に耐えうる調査方法の検討を実施した。 調査項目の指標としての有効性を確認するために、これまでの予備調査によって得られた調査票を再集計した。集計に用いたデータは、対象者が北海道函館市、同桧山郡江差町(商業地)、同奥尻郡奥尻町(離島、漁村)の小学生、中学生とその親合計546組、1092名、項目数は126である。 子どもの消費者技能の発達の指標は、アメリカの研究の知見から「消費者技能」と「非消費者技能」の2種類に分類されている。「消費者技能」は学年(認知発達)の影響を受け、学年に応じて発達する技能で、お金の使い方の技能に代表される。お金の使い方の指標としては、お金を扱う規範、お金を使う頻度と規則性、貯蓄の頻度と規則性があげられ、これらの指標については今回の分析でも有効であることがわかった。一方、学年の影響を受けないとされる「非消費者技能」の発達の指標として、おねだりの頻度、お金を使う頻度、ブランド選好があげられているが、日本の子どもは全般的におねだりの頻度やお金を使う頻度は少なく、アメリカの調査結果に報告されているほどに指標として有効であるとは言えない。そこで、これらに代わる指標の開発と学年ごとの分析方法をさらに詳細にする必要がある。また、子どもの消費者技能の影響要因として、家族要因、仲間集団、マスコミ(広告など)の要因があげられているが、今回の分析では家族要因の影響の方が大きい結果が出ていた。
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