本研究の目的は、3歳から5歳の幼稚園児の消費者技能の発達とその影響要因を縦断調査によって明らかにすることである。研究計画は、平成5年度は調査の枠組みの検討、平成6年度は3歳児と親を対象に第1次縦断調査を開始、平成7年度は平成6年度調査の追跡と対象者数を追加して第2次縦断調査を開始、さらに平成8年度は科研費補助期間は終了したが平成7年度調査の追跡調査を継続した。調査対象者の総数は383組であった。今回の研究成果報告書は第1次縦断調査の結果である。調査対象者は平成6年度3歳児の園児と親14組、同対象者を含む平成7年度4歳、平成8年度5歳になった園児と親21組である。調査の方法は園児は面接法、親は自記式質問紙法による。調査項目は、I情報処理能力、II消費者行動、III金銭意識、IV家族、マス・メディア、友人の影響V認知発達である。親の調査結果は割愛した。 調査結果は次の通りである。1.全般的に消費者技能の発達は早く、年齢よりも家族要因の影響が大きいことがわかった。2.情報処理能力はテレビ広告の理解度や影響で測ったが、幼稚園児の段階では番組とCMの区別はつかず、テレビの内容はすべて本当であると回答している。また、ほしい物の情報源は店での直接的な刺激が強いことから幼稚園児へのテレビの影響は大きくはなく、5歳ぐらいから情報処理能力は発達し始めるようである。3.消費者行動については消費と貯蓄の概念や技能を測った。年齢の影響があり、消費の頻度も貯蓄の頻度も年齢に応じて多くなるが、貯蓄の概念は5歳で形成されつつある。年齢の影響に加え、消費者としての家庭での学習機会の影響も大きい。4.金銭意識はお金の知識やお金で何ができるかの概念を聞いたが、3・4歳児の5割、5歳児の8割が形成されており、年齢よりも父親の職業など属性の影響がみられた。
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