合成洗剤問題に関連する一般市民向け書籍の内容について、皮膚障害、急性毒性、慢性毒性の3点についての記述内容を調査した。対象書籍は昨年度の研究に準じ、「洗剤」、「洗濯」、「石鹸」等のタイトルを含むものとした。その結果、東京、横浜の大手書店で情報を得ようとした場合に、皮膚障害については86%、急性毒性については81%、慢性毒性については82%の確率で、その有害性を消費者に訴えるものに出会うことがわかった。 次に、朝日、毎日、読売の3紙の新聞記事を対象に洗剤問題についての記述を調査した。その結果、記述内容が3種に分かれ、初期には合成洗剤の人体への危険説、中期には琵琶湖周辺を代表とする環境問題に視点をおいた合成洗剤有害論、後期には合成洗剤追放運動の衰退を表す内容が多くなっていることがわかった。人体への安全性問題に関しては、問題を追求するのみで、問題解決がはかられた後の消費者への情報伝達ができていないことが明らかになった。 また、合成洗剤問題を概観できる年表を作製し、一般消費者へ向けたコンピュータネットワーク型データにまとめた。その過程において、一般市民向けの書籍には合成洗剤追放派にとって不利になると考えられる記述がことごとく除去されており、市民が客観的なデータを得るために資料として用いるのにきわめて不適であることが明らかになった。
|