寒冷環境で激しく発汗した場合、最外衣の内側または外側に霜あるいは氷が付着し、外気への透湿が妨げられ、それが溶けると肌側へ水分が移行して、逆に身体を冷やし、体温を奪い、時として生命の危険にさらされる水分のUターン現象が大きな問題となってきた。本研究では、シミュレーターを用いて、実験的に最外布の内側に霜を付着させ、生成した霜の形態を北大の中谷らが行った雪の研究をもとに分類し、繊維材料の吸湿性や表面の親水・疎水性、織物の表面性質等の点から検討した。さらに、低温プラズマ処理により繊維表面を改質し、霜の生成にどのような影響を及ぼすのか、霜の生成を防ぐことにつながるのか、などについても検討した。 織物表面に水蒸気がもたらされた場合、霜の生成現象は、微水滴が成長してできた水滴が生成する開始段階と、針状・鞘型結晶が成長する成長段階とに大別される。ポリエステルやナイロンのフィラメント織物の表面を超疎水化(theta>100°)したり、絹の表面を疎水化にすると、水滴が繊維表面に付着しにくく、その後の霜の成長が遅れ、表面を親水化処理すると、ポリエステルでは鞘型から屏風型へ、ナイロンでは屏風型から角柱へと、霜の成長が抑制された。また、開始段階の水滴の生成には、織物の表面性質(ケバの有無)も大きく作用する。このような研究から、霜の成長を抑制するためには、1織物表面への適度な高い撥水性の付与。2表面疎水性の繊維表面への親水化処理。水蒸気の過飽和度を低下させる。3内衣素材に高い吸湿性のあるものを用いる。4(織物に比べて結晶熱の移動量が少ない)多孔質フィルムの利用、などが効果的である事が明らかになった。 今後、さらに詳しく繊維材料の材質や織物・編物の組織・設計や重ね着の改良によって、低温環境下での衣服の快適性と安全性を含む機能性が高められることが期待される。
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