研究概要 |
平成5年度においては,加古川水運に関する資料収集と分析を行った.具体的には,滝野町の阿江家,小野市市場の近藤家(大阪大学保管),小野市黍田区有文書,高砂市の岸本家所蔵の資料の一部,ならびに流域の商品生産(主に輸送荷物としての木綿)の過程を把握するために印南台地の町村の文書資料,海上交通との関連で淡路島の文書資料,木綿栽培との関連で明石市東二見港の肥料問屋文書の収集を実施した.この中には,申請者が新たに発見した文書資料約1,000点も含まれており,これらの文書の分類整理に時間を要したが,ほぼ整理が終了し,文書の解読と図表化を進めている. 新たな知見としては,近代移行期における加古川水運の盛衰は,下流部の木綿栽培の盛衰と密接な関係を有していたことが明かとなった.姫路藩の木綿専売制により,文化・文政期に加古川流域で綿作が盛んとなり,加古川市見土呂の大西家,別府町の多木家,高砂市の岸本家などの木綿問屋が成立した.綿作の隆盛とともに,肥料としての干鰯の需要が高まり,加古川水運では米,木綿が川下され,内陸へは干鰯などが輸送された.このような流通構造は,やがて明治20年代に変化したと考えられる.現在,このような流通の実態を地域的な連関構造の中で把握するために文書資料の分析,検討を行っている. 以上の研究結果を踏まえ,次年度には補足資料の収集を行い,研究成果をまとめていく予定である.
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