1.本研究は全国的な統計資料の分析と事例分析(フィールドワーク)により、日本の稲作におけるモチ稲栽培地域の地域分化の特質を、地理学的に解明することを直接の目的としている。3年計画の初年度に当たる本年は、基本的な統計資料の収集・整理と北海道を中心としたフィールドワークをすすめた。その結果は以下の通りである。 (1)わが国のモチ稲栽培地域について、明治以降今日にいたる地域的展開状況を把握するための都道府県レベルの試作地図、及び近年の動向をより詳細に分析するための試作地図をそれぞれ作成した。 (2)これらの地図は、わが国のモチ稲栽培地域が近年激しく地域分化を遂げ、栽培地域の立地環境にも大きな変化が発生していることを提示するための基本的な成果であるが、同時にこれらより全国的な地域分化の方向と地域的類型を整序することが可能である。 (3)北海道におけるフィールドワークでは、新しいモチ稲栽培地域形成の最も典型的な事例(名寄市とその周辺地域)について調査し、地域分化を生み出す社会経済的条件と地理的環境との関係について理解を深めることができた。また予期しなかった冷害及び米の自由化問題にたいする地域の反応と対応についても、有意義な知見が得られた。 2.今後は試作地図の完成作業と地域分化の様式のモデル化につとめたい。さらに、残されたフィールドワークに重点を移し、地域分化の要因分析を総合的に行うための調査を進めていく予定である。
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