1.本研究は、わが国の稲作をウルチとモチに分け、モチ稲栽培の面から稲作地域論を展開する新しい試みの一環として、地図分析とフィールドワークにより過去約100年間におけるモチ稲栽培地域編成の特色を把握し、それを規定した条件と地理的環境との関係について考察したものである 2.わが国の稲作におけるウルチとモチとの作付面積は、伝統的にほぼ一定の比率をもって継続してきたが、高度経済成長期以降とりわけ1970年代以降の米の生産調整の過程において、モチ栽培の地位が大きく後退すると共に、ウルチとモチの栽培の地域分化が全国的規模で展開してきたことが明らかになった。 3.今日のモチ稲栽培は日本列島の南北に配置される形で発生した大規模な栽培地域、内陸山間部における栽培地域、そして局地的な栽培地域の3類型に要約できる。 4.モチ稲栽培は、共通してウルチ米での生産対応が困難で、かつ米生産の経済的比重が高い地域で展開してきたことが判明した。それらを可能にした条件としては、(1)良質モチ品種の開発・導入、(2)農協および行政の対応(作付誘導、流通、経営指導)(3)水田の基盤整備、(4)稲作一貫機械化体系の普及、などの要因を指摘することができる。 5.モチ稲栽培の地域における位置づけ方は、それぞれの地理的環境と密接に関連しており、分化したモチ稲栽培の地域的性格は明瞭な差異をともなっている。このことは、地域環境に適応した稲作展開を図ることが稲作地域として持続しうる大きな条件の一つであることを意味する。
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